「合成数」の定義と具体例同定の問題解答・解説
【問題】
※数学の問題ではありません。「短文を正しく読めるか」を測る問題です😎
1とその数以外の約数を持つ整数を合成数という。合成数の例として正しいものを次のa.)~c.)の中からすべて選び、その個数を答えなさい。
a.) 1
b.) 2.2
c.) 9
【正解】
1個
【解説】
1とその数以外の約数を持つ整数を合成数という。
この文は、ある特徴を持った整数を「合成数」と定義していることを説明しています。
「整数」にくっついている修飾語をを「~」に変えて少し見やすくしてみます。
[~整数]を合成数という
まずこの時点で、b)2.2は整数ではないため、b)はあてはまりません。
どのような整数のことを言っているのか、「整数」にくっついいている修飾語を見ると、
「1とその数以外の約数を持つ」とあります。
整数は必ず約数を持っていますが、どのような約数を持つ整数かということを限定しているわけです。
先ほどと同様に「約数」にくっついている修飾語を~に変えて見やすくしてみます。
[[[~約数]を持つ]整数]を合成数という
そしてどのような約数を持つと限定しているかと言えば、
「1とその数以外」と限定しています。
全ての整数は1とその数自身を必ず約数として持っていますが、
「1とその数」以外の約数ということなので、
約数の中に「1とその数」だけしか無いものは含まないということになります。
これで意味がはっきりしたので a) と c) を見てみると、
a)の 「1」が持っている約数は1だけ、つまり「1とその数」だけしか約数が無いので当てはまりません。
c)の「9」が持っている約数は、1とその数(9)以外に3を持っているので当てはまります。
よって正解は c) のみの「1個」となります。
念のためここでもう一度、提示された定義文の係り受けの構造を図で示しておきます。
数学や「文の書き方」の問題ではない
ところでこの問題、RST(具体例同定)の問題例
1とその数以外の約数を持つ整数を合成数という。
合成数の例として正しいものを選択肢からすべて選びなさい。
① 1 ② 2.2 ③ 0.6 ④ 9
解答)④
※新井紀子著「AIに負けない子どもを育てる」 東洋経済新報社
をそのままに、ツイッターの形式に対応できるよう、
選択肢の数を減らし、個数を答えるようにして4択で答えられるように改変した問題なのですが、
「約数」の定義をどうするかで答えが変わってしまうといえば変わってしまいます。
初等数学で断りなく「約数」と言う場合、ふつう負の数やゼロは含まれないので、素直に解釈すれば、
「1とその数以外の約数を持つ整数を合成数という」の「整数」の部分が「整数」か「自然数」かに関わりなく、
答えは「1個」に決まります。
小・中学校で「約数」を教わったときも負の数やゼロは含めなかったはずです。
しかし「約数」の範囲をゼロや負の数に拡張することもでき、その場合は
1÷(-1)=ー1
となるため、「1とその数以外」の「約数」を持つことになり、
この定義の仕方だと1も合成数に含まれてしまう。
という解釈も可能と言えば可能です。
この問題を出すと、これを持ち出して問題文が悪文だとか、
数学的に正しくないというような批判をする人がいます。
確かに、誤解を生みにくい適切な書き方としては、
「ある自然数Nについて、Nが"1とN"以外の正の約数を持つとき、Nを合成数という」とか
(これも自然数にゼロを含める定義の仕方があるので、ちょっと良くないかも)
「ある2以上の整数Nについて、Nが"1とN"以外の正の約数を持つとき、Nを合成数という」
とするのが現実的な範囲では一番まともかと思います。
(たぶんこの問題文も元となる教科書か何かに「ある2以上の整数について、1とその数自身以外の約数を持つ整数を合成数という。」と書いてあったのを端折ったのではないかと思います。)
しかし、冒頭の注意書きにもある通り、これは数学の問題でも、
「文章の書き方」の問題でもなく、
書いてある文をきちんと読めるかどうかの問題です。
書いてある文が悪文であろうが、美しい文であろうが、
内容が事実であろうが事実でなかろうが、関係ありません。
問題文と選択肢を普通に読んだときに解答が定まるならば、
「読み方」の問題としては十分成立します。
文章中で直接説明されていないことは、常識で補完するしかありませんが、それでいいんです。
むしろ、「読み方」の問題としては、
「自身」というヒントになりそうな言葉を省いたり、
「その数」の先行詞を文に含めなかったり、
「約数」をはじめて習う段階で習っていない正負の概念や文字を持ち出さない
という工夫の凝らされたいい問題と言えるかもしれません。
そのような批判をする人は注意書きや出題意図が読めていないので、どっちみち読解力が無いということになります。
試験では、出題者の意図を問題文から読み取ったり、常識で推し量ったりするというのも必要な能力です。
批判をするのは自由ですが、それにこだわっても得をすることなんて何もありません。
「具体例同定」能力の鍛え方
「具体例同定」の能力は抽象概念を扱う能力そのものです。
子供は発達の過程において、目の前にあるものから出発して、
観察を通じて共通点を見出し、グループ分けを行うようになります。
その「グループ」こそが抽象概念の出発点であり、
グループ分けの基準が定義文理解の原型となります。
その後、グループ分けの基準を先に学んでグループ分けをすることができるようになり、
抽象概念のみを使って2次的に定義した抽象概念を理解する段階に進み、
徐々に抽象度の高い内容を理解できるようになっていきます。
この過程をなぞることこそ、具体例同定の訓練になると私は考えています。
具体的には、
①ある定義に沿った具体例を用意し、定義を説明せずに、その具体例の共通点やその概念の名前を答えさせる。
②国語辞典などで説明された言葉の定義を元に、具体例を答えさせる
③理科や社会の用語集などに載っている抽象度の高い概念の具体例例を挙げさせる
という作業を繰り返しやっていきます。
ただし、この方法では定義文を理解した教師役の存在が不可欠です。
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理由は以下で説明します。
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