「悪文である」は言い訳!!悪名高き「アミラーゼ問題」の解答・解説

【問題】

アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

セルロースは(     )と形が違う。

(1) デンプン (2) アミラーゼ (3) グルコース (4) 酵素

※新井紀子著『AIvs.教科書が読めない子どもたち』より

【正解】

デンプン

【解説】

最初に提示された文の「形が違うセルロースは分解できない」の部分には

「何と」という情報が欠けていますが、

これがわかれば(   )内を埋めることができるはずです。

この時点で(?)と思っている方は同義文判定の能力に問題があります。

「何と」という情報は直接は書いてありませんが、

すでに出てきている情報のためその場所では省略されています。

「(〇〇と)形が違うセルロースは分解できない。」

この省略されている〇〇は何かを考えるのがこの問題です。

ヒントになるのはその直前にある

「同じグルコースからできていても」

という部分です。

ここでも何と「同じ」なのかが書かれていませんが

ここもセルロースと〇〇の比較が書かれており、

同じように「○○と」が省略されていることがわかるので、

ここから考えてもいいわけです。

ここまでのことを一旦まとめます。

・元の文の省略されている部分をわかりやすくすると、

「アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、(〇〇と)同じグルコースからできていても、(〇〇と)形が違うセルロースは分解できない。」

・(〇〇と)が共通の太字部分から考える

ここで、「グルコースからできて」とありますが、

その直前までの文でグルコースからできていると言及されているのは

「デンプン」以外にありませんので、

〇〇に入るのは「デンプン」に決まる。

よって正解は「デンプン」以外に考えられないということになります。

出典は教科書の文;この文が読めない≒教科書が読めない

この問題は基礎的読解力のうち「照応解決」を測る問題の中では比較的難しい問題とされていて、

大人でも高確率で間違える問題です。

公立中学校の中学生の正解率はなんとわずか9%、高校生でも30%しかありません。

あてずっぽうでも25%ですから、これがどんなに低いかお判りでしょう。

しかし実はこの文章、出典は高校の生物基礎の教科書(東京書籍「新編・生物基礎」)です。

つまり、「本来高校受験生や高校生はこのくらいなら読めて当たり前」という前提で

教科書や試験問題は作られているのです。

おまけ:恥ずかしげもなく繰り返されるこの問題に対する大人たちからの批判への回答

以下はちょっとした愚痴です。かなり怒っていますので、お嫌いな方は次の見出しまで読み飛ばしてください


この問題はRSTという読解力を測るための試験の「照応解決」カテゴリの例題ですが、

教科書の監修や教科書検定を通じて何度も専門家のチェックを受けている文であるにも関わらず、

この問題を取り上げると、やれ「この文章は悪文だ」とか、

外からの知識を持ち込んで「科学的に正確ではない」「言葉足らずだ」とか、

「解答がひとつに絞れない」とかいう非難をするオトナがちょいちょい出てきますが、

そういう方は問題文や出題の意図を正しく読めなていない、

読解力の無い人です。

理由は以下の通りです。


悪文である→

「良し悪し」は主観的な評価でしかないし、

世の中のすべての人が良文であると認める文章など存在しない。

誰かが悪文と感じる文章であっても、

正しく読んだときに解釈が定まる文章であるなら、文章として正しいし、

仮に意味にあいまいさが残ったとしても、

正しく読んだときに解答が定まる問題なら、

少なくとも読み方の問題としては成立する

読みにくい文章だから読み方の問題として取り上げているのに、

読みにくいという批判は問題の意図を理解していないとしか言いようがない。


科学的に・・・→

「この文脈において」と書いてあるの見えていますか?

文章というのはふつう、

ボリューム、前提となっている背景知識、使用される場面や目的など、

一定の制約がある中で作られるものです。

抽象概念には、文脈やシーンによって意味や定義が変わってくるものもあります。

例えば、「平行線の数」はユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学で変わってきます。

しかし、「ユークリッド幾何学の公理系のもとで」なんていちいち断りますか?

断らないでしょう。

中学校や高校の問題であれば、その範囲で習った「平行線の数」の意味だということは断りが無くても誰にでもわかります。

これが出題意図という一種の文脈情報です。

平行線の例を挙げるまでもなく、全ての概念と知識を完全に疑念の余地なく網羅し、

なおかつ制約に従った文章を作成することなど土台不可能です

突き詰めるにしても、限度というものがあります。

「われ思うゆえにわれあり」まで遡れとでもいうのでしょうか。

もし「この問題文・この文章なら普遍で完璧だ」と思うものを作れるなら私に送ってください。

必ずや何らかの穴を見つけてここで晒して差し上げましょう。

※この文章に穴が無いと言っているのではなく、文脈に依存しない穴の無い文章を作ることなどそもそもできないと言っています。


解答がひとつに絞れない→

上記で説明したように、この文脈では省略された「〇〇と」にあてはまるのは「デンプンと」以外に考えられません。

この文脈において他につじつまの合う読み方があるならぜひ教えていただきたい。

入試でも良く出る「読めばわかる」問題;その出題理由は?

実際の学校の定期試験や入試問題でも、このように知識が無くても解ける問題というのは実は結構あります。

もちろん入試問題ともなれば、更に知識の完成された状態を前提にした文になるので、

もう少し専門的かつ隙の小さいものになると思います。

わざと受験生の誰もわからないような難しい言葉を使って、

「読めばわかる問題」を出してきたりもします。

入試をやる側からすると、講義を聞けば正しく理解できるような、

「勉強すればいくらでも伸びる」生徒に入ってきて欲しい

(日本語が理解できないような「伸びしろの小さい」生徒はできればご免こうむりたい)

と思っているからです。

難しい学校になると、受験生皆が勉強しているような知識問題だけでは点差が開きにくく、

そのような問題ばかりではうまく選抜できないという事情もあります。

裏を返せば、どんなに難しい言葉を使った文章にも対応できる読解力を身に着けていれば難関校で勝負できるということです。

ご家庭で簡単にできるトレーニング方法

文章を読むというのは、何か知識を教えただけですぐにできるようなものではないので、

こうすればすぐに「照応解決」ができるようになるという方法はありません。

地道に鍛えていくしかないのです。

ですが、時間はかかっても簡単にできるトレーニング方法があります。

お子様が何かを話すときに、文要素や修飾語が抜けていることは多々あるかと思いますが、

そのときにツッコミを入れる方法です。

主語が抜けているときは「何が?」「誰が?」、

必要な修飾語が抜けているときは「どこで?」「何に?」「何の?」「どんなふうに?」など

いちいちツッコミを入れるのです。

これにより、「文要素や必要な修飾語が抜けていると気持ち悪い」という感覚を持たせます。

そのような感覚が身についてくると、文章を読むときや人の話を聞く時も、

文要素や修飾語の存在を常に意識して読んだり、聞いたりするようになります。

時間的には何年もかかると思いますが、かなり効果的な方法です。

「短期間で鍛えたい!」「集中的に鍛えたい!」「そんなことしていたら親子関係が・・・」という方は、

以下もご覧ください。

読解力アップにお勧めの教材

新国語講座

基礎読解力というものは頭で理解するだけで身につくものではありません。文章を論理的に読む訓練が必要です。

よくある勘違いですが、市販の国語の問題集で長文読解をやみくもにやっても、基礎読解力は身につきません

基礎読解力が無い方は短文を正確に読めないのですから、長い文章にやみくもに当たっても効果が出ないのは当然です。

この新国語講座では基礎読解力を6つのカテゴリに分けて、それぞれのカテゴリにフォーカスした問題を使って訓練することができます。

この新国語講座は論理的に正確に読むという点にフォーカスが当たっています。

じっくり時間をかけても正確に読めないという生徒さんにお勧めの教材です。

学習塾専用教材となっており、全国のお近くの学習塾で受講可能です。

近くの塾がリストに無い、塾ではなくオンラインで受講したいという方は、

リュケイオン・オンラインで5500円~で受講できます

速読解力講座やすららとセットでお得に受講できるメニューもあります。

速読解力講座

試験で成績を残すためには、「正確に読める」だけでは足りません。

試験には制限時間があり、その時間内で「速く正確に」読める必要があります。

学校の授業でも先生の板書や説明のスピードに追い付く必要があります。

せっかく文章を正しく理解する力があっても、スピードが追いつかないのなら「読めない」のと大差ありません

高校入試も大学入試も近年語数が著しく増加しており、「速く読む」ことも含めて必須のスキルになりつつあります。

「速読解力講座」は認知能力や情報処理スピードにフォーカスが当たっており、

「速く読む能力」を身に着けるためのたくさんの種類のトレーニングを行うことができます。

情報処理が遅い生徒さんや、いつも試験で時間が足りなくなってしまう生徒さんにお勧めです。

学習塾専用教材となっており、全国のお近くの学習塾で受講可能です。

近くの塾がリストに無い、塾ではなくオンラインで受講したいという方は、

リュケイオン・オンラインで5500円~で受講できます

新国語講座やすららとセットでお得に受講できるメニューもあります。

すらら

すららは読解力特化の教材ではありませんが、

実はこのすららの「国語」が基礎読解力の養成に大変効果的な内容と構成になっています。

いきなり長文から始まるような国語教材には基礎読解力を上げるには向いていないというお話をしましたが、

このすららは1文を正確に読むためのスキルを身に着けるところから始まり、

2~3文程度の長さの文、中くらいの文、よくある国語問題集の長文くらいの文、

入試レベルの長文という形で順を追ってステップアップしていく構成になっています。

そして1文の読解や2~3文・中くらいの長さの文の読解のフェーズでは、

この問題でも取り上げた照応解決、係り受け、推論、具体例同定など

基礎読解力6分野のうち5分野を丁寧にカバーしていて、まさに基礎読解力養成に適した内容になっています。

すらら国語でカバーされていないのは基礎読解力6要素のうち「イメージ同定」のみですが、

こちらは算数(数学)・理科・社会でカバーすることができます。

しかもこのすらら、受講者はもれなく無料のコーチングサービスを受けることができます

生徒さんの実力や学習段階に合わせた目標を、学習塾経営者がたててくれ、進捗管理までしてくれます。

確かな読解力が身につくまで二人三脚で伴走してくれるというわけです。

私も現役のすららコーチとして活動していますが、その際、理解力に課題がある生徒にはまずこの国語を勧めています。

この教材を順を追ってやっていけば読解力が上がり、勉強全体が進めやすくなるという確信があるからです。

すららの国語は

・トレーニングだけでなく、説明もじっくり聞きたいという生徒さん

・基礎読解力を長文につなげたい生徒さん

・進捗管理や学習計画までみてほしい生徒さん

など幅広い層にお勧めできます。

このすららもリュケイオン・オンラインで3~4教科8,800円・5教科1,1000円で受講することができます

値段はすららネットで直接受講するのと変わりませんが、リュケイオンオンラインでは質問ができたり、

他の講座の割引が受けられたりといった他にはない特典があります。